【バンコク春日孝之】戒厳令が発令されたタイの首都バンコク。首相府などの付近に戦車や装甲車で詰める兵士に緊張感はない。市民や観光客が周囲に集まり、記念写真を撮るなど「静かなクーデター」を印象づけた。 「クーデター発生」の情報が流れた19日午後9時すぎ。2台の戦車が待機する首相府北門前で実況していたテレビ局の女性記者(35)に、日本人観光客が「何のイベントですか?」と声をかけた。記者は「クーデター取材は初めてだけど、タイ式クーデターは平穏そのものね」。ただ、クーデターには「民主主義をおとしめるから正当化できない」と話した。 戒厳令が出た後の翌20日午前1時。北門周辺には15人ほどの兵士が詰めているが、時折タバコを吸ったり、談笑したりしている。テレビのニュースでクーデターを知ったタイ航空の女性社員(23)は、完全武装して戦車の前に立つ兵士を「よくやったね」と激励、一緒に写真に収まった。社員は「タクシン首相は嫌い。首相一族は不透明な株取引で大もうけをしたから」と笑顔で語った。 夫の駐在に伴って今年4月からバンコクで暮らす小川由美さん(40)は「まさかバンコクでこんなことがあるなんて。日本人学校と幼稚園は臨時休校になり、外出が禁止されているので、買い物ができるかも心配」と不安な表情をみせた。